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帰着★(9/10)

水音が止む。
しばらくして、上半身裸の同僚が、無言のままで部屋の入口に立つ。
入れ替わりでシャワーを浴びようと立ち上がった時、奴が口を開いた。
「お前は、良いよ」
「は?」
濡れた髪を拭きながら俺に近づき、皺の刻まれたワイシャツに顔を寄せる。
「・・・その匂い消して、オレの、つけてやる」
小さく呟いたその声には僅かな敵意の影が見えて、背筋が寒くなった。

奴に手を引かれ、俺はベッドに横になる。
仰向けの身体に同僚が馬乗りになり、ベッドの軋む音が響いた。
ネクタイに手がかかり、解かれる。
ワイシャツのボタンが上から外され、けれども全てを脱がされることは無い。
肩口までずらされて露わになった首元に、ゆっくりと舌が這う。
刺激で肩を捩ると、濡れた髪が頬をくすぐり、その冷たさが興奮を煽った。

首から耳へ柔らかい感触が上って来て
耳の裏側を丹念に舐り、耳たぶをしゃぶるように甘噛みする。
熱を帯びた手はシャツの中に入ってきて、上半身をまさぐり始めた。
「何されて、気持ち良くなったんだ?」
目の前で、妬みを含んだ問いが向けられる。
「何・・・って」
彼との行為を口にするのは憚られて、居心地の悪い静寂が訪れる。
首の下に腕が回り、浮いた頭に奴の顔が近づいてくる。
逆の手は、肩から二の腕の辺りを撫でていた。
「不安・・・なんだよ」
「どうして?」
「お前が、満足してくれるのか、分からない」
「好きなように・・・すりゃいいじゃん」
「そんなんじゃ、勝てねぇだろ」
「何に?」
浅沼の切なげな表情が、歪む。
「・・・初めて、に」

くだらない、と切り捨てるのは残酷なんだろう。
初めての男、初めての女を意識する気持ちは、よく分かる。
初体験の女は、処女じゃなかった。
それだけで、どうしようもない劣等感を抱いた昔のことを思い出す。
長年想い続けてきた相手が、心も通わせていない他人と初めての関係を持つ。
俺だったら、冷静じゃいられない。


動きの止まった浅沼の両肩を掴み、上半身を起こさせる。
「場所、交代だ」
「は?」
「良いから、言うこと聞けよ」
不可解な様子で、同僚がその身体を避ける。
俺は、ワイシャツを定位置に戻しながら、ベッドを降りた。
「お前、男としたこと、あんの?」
「・・・ある訳ねぇじゃん」
照れたように目を伏せる奴の身体を引き寄せ、ベッドに促す。
覆い被さるように、その上に跨った。
「じゃ、俺がお前の、初めて、だな」
「な・・・」
「それで、いいだろ」
複雑な表情を見せる唇に、俺は自分の唇を重ねた。

未だ湿気を帯びた肩から、二の腕に向かって撫で下ろす。
もう一方の手で顔を上向かせ、首筋に舌を這わせた。
深く吐く息が、俺の髪を僅かに揺らす。
鎖骨を軽く唇で挟んでなぞると、窪みが深くなる。
手を添えた脇腹が強張り、早くなる鼓動を感じる。
一つ一つの反応を楽しむよう、俺は同僚の身体を解して行った。

当処も無く枕を掴む浅沼の手を、自分の下半身に誘う。
その意図を汲んだのか、奴は俺のベルトを外し、ズボンの前を開ける。
隙間から入ってきた手がモノに触れ、腰が引けた。
同僚との関係が崩れていく瞬間。
戸惑いを払い除けるように、再び目の前の身体に舌を滑らせる。

腰を浮かせ、四つん這いになった格好で、浅沼の乳首を舌で転がす。
奴の手は、俺のモノを軽く扱き始める。
ベルトの金具が起こす金属音が、荒くなる息遣いに混ざって行く。
キスを求めると、その唇の動きは興奮を隠しきれていなかった。
熱くなる身体を、もっと感じたい。
「なぁ」
「・・・ん?」
「脱がして、くれよ」

□ 24_帰着★ □   
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地震御見舞い

テレビで浦安の液状化現象の映像を見ました。
ご無事でいらっしゃいますか!?
取り敢えず、地震の御見舞い申し上げます。
余震にお気をつけ下さいませ。

祈無事

東北沖地震被災の皆さんに心からお見舞い申し上げます。
まべちかわさんの細やかな心遣いに感謝します。
文面から、故郷が東北方面と推察します。
皆さんのご無事を心からお祈りしています。

お心遣い感謝です。

>サフランさま
>けいたさま

お心遣い、大変痛み入ります。
東京もだいぶ揺れましたが
帰りの電車が動かず、歩いて帰宅する羽目になった程度で、こちらの方は大丈夫でした。

私の故郷は、宮城県の仙台市にあります。
また、HNに使っている まべちがわ は、縁のある岩手県北部を流れる 馬渕川 から取りました。
いずれも今回の地震で大きな被害を受けており
連絡の取れない親戚や友人も多く居て、大変心配な時間を過ごしております。
とにかく、その無事の確認と、一日も早い復興を手助けできればと考えています。

夜には『帰着』最終話の更新をさせていただく予定です。
閲覧者の皆様には、大変ご迷惑をおかけいたしました。
Information

まべちがわ

Author:まべちがわ
妄想力を高める為、日々精進。
閲覧して頂いた全ての皆様に、感謝を。

2011-3-12
東日本大震災の被害に遭われた方に
心よりお見舞いを申し上げます。
故郷の復興の為に、僅かばかりにでも
尽力出来ればと思っております。

*** Link Free ***



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